秘密だよ?~ピアノとバスケそして君~
「まあ、まあ、まあ…」

まあるい目の、千葉によく似たお母さんが、

嬉しそうに俺たちを迎えた。


「ママあっちいっててよ。あと、湿布頂戴!」


「はじめまして、能勢天道と申します。」

戸惑いながら挨拶をしていると、


「いいのよ挨拶なんて、

 上がって上がって。」


半分母親を無視しながら俺を家の中に追い立てる。


「適当に座って待ってて。」


その家は、やや古めかしい佇まい。

外壁も、木というよりプラスチックに近い板材で、

床も軋んで、歩くたびにキシキシと音をさせる。

いかにもサラリーマンの社宅なんだなって感じがした。

千葉の印象からすると、いいとこのお嬢さんってイメージだったから、

失礼だが、ちょっとギャップに驚いてしまった。


「能勢くん?のせっちよね?」


千葉のお母さんは、お茶とケーキを目の前に置きながら、

甘い香りと、可愛らしい笑顔で話しかけてきた。


興味津々のお母さんは、

俺に色々聞きたくてしょうがないらしい。


「ピアノが上手なんですって?」


「はあ、上手っていうか…」


「ああ!もぉっママあっち行っててって言ったでしょ。」


「もぉ、わかったわよ。チョッちゃんのケチ。」


「へえ、家ではチョッちゃんてよばれてんだ?」

俺がつぶやくと、

千葉はじろりと俺を睨んだ。

ええ?こわっ!イメージ狂うよ千葉

「ママ!」


「はいはい、また後でねのせっち?」


「ああ、はい。」


「もぉっ早く行ってってば!」

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