秘密だよ?~ピアノとバスケそして君~
生徒用の玄関で、たかちゃんが、

今度の土曜日は予定があると言い出した。


「え?」


「ごめん。」


「どうして?」


今度の土曜に行くはずだった遊園地。

楽しみにしてたから、

つい、攻めるような言い方をしてしまった。



「東京に行くことになった。

 レッスンを受けに…ごめん。」


すごく気まずそうにうつむくたかちゃんに、

ひどいとか、そんなこと言える訳ない。


コンクールがどんなにたかちゃんに大切なことか、

知っているから。


「そっかあ、じゃあしょうがないね。

 うん、たかちゃんの分まで楽しんでくるから。」


言いながら声が震えてるのが伝わらないか心配になる。



「俺の分まで、楽しんできて!」

「うん。」


たかちゃんのホッとした声が、なんだか悲しくて、泣きそうになる。



「あ…忘れ物したみたい。

 たかちゃん部活あるんでしょ早く行って。」


「え?千葉?」


踵を返して廊下を駆け出した。


口をキュって結んで、泣かないように頑張った。


すれ違った先生に、


「廊下を走るな!」


と声をかけられたけど、反応なんてできなかった。


声を出したら、泣きそうだったから。


いや、もうすでに

心の中では泣いてるんだけど。





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