星空の魔法
後悔だけが押し寄せてくる

恥ずかしくて長谷部さんの顔を見れない

『ありがと』

長谷部さんがポツリと呟いた

『何もしてないよ。星空がそうさせただけ。夢だよ、きっと』

あたしは、星空を見上げながら言った

自分に言い聞かせていたのかもしれない

こんな事をしていい相手なわけないんだから

子供の同級生のお父さん

旦那の同級生

こんなのいいわけない

わかってる

旦那と結婚して以来、こんな事をしたのは初めてだった

だから、どうしていいのかわからない

長谷部さんの手があたしの手を求めていた

あたしはその手をギュッと握り返した

お互いに手を強く握り合った

それを見ているのは星空だけ

唇を重ねた瞬間を見ていたのも星空だけ

あたしと長谷部さんの秘密は星空だけが知っていた

2人で手を握り合いながら、星空を見上げた

『ホントに綺麗な星だね』

あたしはようやく言葉を絞り出した

『うん。このままで時間が止まって欲しい』

長谷部さんは叶わない願いを口にした

それから、あたしの顔を見つめた

『もうダメだよ』

あたしは次に起こる事をわかっていたから、すぐに拒んだ

『こんなの、いいわけないんだからね』
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