星空の魔法
色んな話をした

子供の事

長谷部さんの奥さんの事

あたしの旦那の事

ずっと手を握り合ったままで

時々星空を見上げながら

時間が止まったような錯覚に陥っていたけれど、現実に戻らなくてはいけない

あたしはバッグから携帯を取り出した

時計はちゃんと進んでいて、すでに4時を指していた

『もうこんな時間だよ』

『本当だ。帰りたくないけど、帰ろうか』

長谷部さんはゆっくりと立ち上がった

そして、もう一度キスを求めてくる

あたしは、軽く唇を合わせるだけのキスをした

『これは、2人と星空だけの秘密ね。この先はまたいつものあたしたちで。これは、酔った勢いの夢だったんだからね』

長谷部さんは何も言わなかった

『じゃあ、帰るね』

『そこまで送るよ』

うっすらと空が明るくなってきていた

あたしと長谷部さんは手を繋いで、寄り添い合いながら、歩き始めた

すぐそこまでだったけど、ゆっくりと

うちの近くの街灯が見え始めた

握る手に力が入る

特に何も話さなかった

ただ寄り添って歩くだけ

街灯まで着くと、長谷部さんはあたしを見つめた

そして力強くあたしを抱きしめた

あたしも躊躇いもなく、ギュッと背中に手を回した
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