お姫様の作り方
「茉莉花お嬢様!?」
驚く猿田の声はドアを閉めることで回避する。猿田はもう戻れない。信号が青になったのだから、ここで後退すれば交通事故の発生だ。
私は一瞬だけどすごい音を放った方へと走る。この際自分がパーティ用のドレスに身を包んでいることは気にしない。
仕事帰りのサラリーマンにOL、学生が入り乱れる歩道を走る。
確実に〝声〟に近付いている。
「歌って…るっ…!」
少しだけ人だかりができた道の片隅。
強い声が私の耳を震わせる。
ギターの音と彼の声が妙に心地良い。
周囲からは小さな拍手が起こっている。
「今日も聴いてくれてありがとうございました!」
小さく下げられた頭がやっと見える。今更になって気付くがこんなに高いヒールで走ったものだからじわじわと足が痛い。
それにこの格好。パーティ用のドレスに上は大したものを羽織っていないからこそ寒さが直に刺さる。多少走ったとはいえ、身体が暖まるほどではない。
「え…?なにこの子…。」
「なんでユウキの歌聴きに来てんの?」
周りがざわざわと私の格好に反応をし始める。20人ほどいた観客のほとんどが今、私を見つめている。
それに気付いた〝彼〟と、初めて目が合った。
「おーはじめましてのお客さんだな!すげー格好!
はじめまして、俺、ユウキって言います。」
彼はニカっと笑って、「どーぞよろしく」と付け足した。
驚く猿田の声はドアを閉めることで回避する。猿田はもう戻れない。信号が青になったのだから、ここで後退すれば交通事故の発生だ。
私は一瞬だけどすごい音を放った方へと走る。この際自分がパーティ用のドレスに身を包んでいることは気にしない。
仕事帰りのサラリーマンにOL、学生が入り乱れる歩道を走る。
確実に〝声〟に近付いている。
「歌って…るっ…!」
少しだけ人だかりができた道の片隅。
強い声が私の耳を震わせる。
ギターの音と彼の声が妙に心地良い。
周囲からは小さな拍手が起こっている。
「今日も聴いてくれてありがとうございました!」
小さく下げられた頭がやっと見える。今更になって気付くがこんなに高いヒールで走ったものだからじわじわと足が痛い。
それにこの格好。パーティ用のドレスに上は大したものを羽織っていないからこそ寒さが直に刺さる。多少走ったとはいえ、身体が暖まるほどではない。
「え…?なにこの子…。」
「なんでユウキの歌聴きに来てんの?」
周りがざわざわと私の格好に反応をし始める。20人ほどいた観客のほとんどが今、私を見つめている。
それに気付いた〝彼〟と、初めて目が合った。
「おーはじめましてのお客さんだな!すげー格好!
はじめまして、俺、ユウキって言います。」
彼はニカっと笑って、「どーぞよろしく」と付け足した。