お姫様の作り方
「何この子…。」

「派手じゃない?」

「派手っていうかー…。」


〝ユウキ〟の周りにいるお客さんはほとんどが女性で、その女性たちの冷ややかな視線が私に降り注ぐ。
こんな恰好をしていたら当たり前だとは思うけれど、それでもやっぱり居心地の良いものではない。


「私…ご、ごめんなさい!邪魔して…でも、車からあなたの声が聞こえて…近くで聴きたくて…!」


近くで聴きたかった。音の正体を確かめたかった。たったそれだけの理由。


「邪魔なんかしてねーよ。今日はさっきので終わりにしようかって思ってたけど…じゃあおまけにもう一曲!」


ギターの音が彼の指先から紡がれ、私の耳に届く。
自由に身体を動かし、声の赴くままに歌い上げるその姿はただ〝自由〟だった。


笑顔が零れ、声が伸びていく。本当に真っすぐに。
笑いながら歌う彼の視線と自分の視線が時々ぶつかると、私の視線の方が先に泳いだ。
…なんだか、眩しくて直視できない。


「はぁーっ…歌った歌ったー満足!ってなわけで今日はこれで終わり!
またどっかで歌うから、その時はまた聴きに来てくれー!」


大きな声でそう言って、彼はまた頭を下げた。
彼がギターを下ろして帰り支度を始めると、お客さんたちが「また来るねー」と言って帰っていった。


…私は何故か、動けないでいた。

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