お姫様の作り方
残ったのは彼と私の二人。


「はいよ!」

「きゃっ!」


上手く掴めなかった私の足元に落ちたのは彼のジャケットだった。


「あーわり!でもとりあえず着ろ。寒いだろ。」

「でもこれはあなたので…。」

「あなたじゃなくてユウキ。あなたとかむず痒すぎる。」

「…漢字はどう書くの?」

「え、あー…自由の由に高貴の貴で由貴。」

「…自由…。」

「ってお前、足赤くなってんぞ!靴ずれかそれ!」

「え…?」


足元を見やると彼の指摘通り、所々赤くなっていた。言われて意識すると痛みは増す。


「っとそこ座れ。」

「え?」

「バンソーコーしかねぇけど、とりあえずねぇよりマシだろ。
つーかお前、その格好何なわけ?どこぞのお嬢様?お姫様?何?」

「…お姫様なんているわけないでしょ、日本に。」

「まーそーだけど。でも俺、こういうドレス、初めて見たし。」

「私もこういう風な口きかれるの、生まれて初めて。」

「え?」


私の靴に触れようとした彼の手がピタリと止まった。


「本物のお嬢様ってやつか、お前…。」

「そう。今触ろうとしたパンプス、2万はするわ。」

「っ…まじか!」


彼の手が思いっきり引っ込んだ。

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