お姫様の作り方
「なるほど。お前は自由じゃねーわけだ。」

「え?」

「あ、つーか名前、名前教えろよ。俺も教えたんだし。」

「ま…茉莉花。虎南茉莉花よ。」

「へぇーマリカ。漢字は?」

「紙とペンある?」

「おーあるぜ。」


ギターケースの隣にあったリュックをごそごそとあさって、小さなメモ帳とシャープペンシルを取り出した。
それを受け取って、私はすっと名前を書く。口で説明するのは面倒だ。


「ほーこれで茉莉花か。」

「そう。」

「茉莉花は自由になりてぇんだな。」

「まぁ、無理な話だけどね。」

「何で?」

「何でって…私はあなたとは違うもの。こんなところでギター片手に思いっきり歌うなんてこと…私にはできない。」

「できるだろ。茉莉花、声あるし。」

「は?」


ギターケースをもう一度開けて、しまったはずのギターを取り出して肩にかけた。


「な、今日はもう終わりじゃ…。」

「終わりにしようと思ったけどやめる。
茉莉花だって歌えるってことを証明してやるよ。」

「っ…歌えるわけないでしょ!」


いつの間にかすっかり彼のペースに乗せられていることに、私はここでようやく気付いた。
口調だって一番話しやすいものに自然となっている。

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