お姫様の作り方
「送る…と言いたいところなんだけど、むしろお前逃亡中なんだろ、今。」

「人聞きの悪いことを言わないで。逃亡じゃなくて車を降りただけよ。」

「いやいや。それを逃亡…逃走か?まぁどっちでもいいけどそんな感じだろ。
で、どうする?」

「何が?」

「どうやって帰るんだよって話。歩いて帰るなら送るけど。」

「…ここから歩いたら40分以上かかるわよ。」

「うげ、じゃあ俺の家からすげー遠いじゃねーか。」

「でしょうね。それに送ってもらおうなんて思ってないわ。車、呼ぶ。」


そう言ってから気付く。…カバンは車の中だ、と。


「ん?どうした?」

「携帯、車に置いてきたわ。」

「は?」

「…困ったわね。いちいち猿田さんの番号も覚えていないし…。
会社に電話したら猿田さんが怒られてしまうし…。」

「お前が悪いんだろ?逃げたりするから…。」

「ええ。だから猿田さんが怒られない方法を考えてるんじゃない。」

「…待て待て。なんでサルタさん?が怒られる?」

「お父様が私に対して怒るはずないのよ。」

「なんだそれ?」

「…私を甘やかしているから、ね。私が気分を害することのないように育てるというのがお父様の教育方針よ。」

「…なんっだそれ。全然意味わかんねー。」


少し怒ったような物言い。…でも、その反応こそ当たり前というか当然の物だと思う。


「…お父様が私の気分を害さないようにしているのは、私を籠の中に閉じ込めるためなのよ。」

「は?」


お父様が私に何を思うのか、私は知っているの。
そんなのもう、もっと幼い頃から知っている。

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