お姫様の作り方
「目に見えるもの、そうね…つまりお金とか物とかそういうもの全般について、何不自由なく与えられてきたわ。それこそ望めば何でも。どんなに高いものでも。行きたいところにはどこにでも連れていってもらえるし、ワガママな要求もお金で解決できるものならば…多分叶えてもらえるわ。
お父様はそれで…それで私に自由を与えていると思っているのよ。
だからその代わりに…かりそめの自由の対価に、本物の自由は奪われる。」


…私、何をこんなに重いことを話しているのだろう。しかも今日会った赤の他人に。
こんなことを話しても、きっと由貴は私の境遇にもこの感覚にも共感なんてこれっぽっちもできないだろうし、私だってそんなことは求めていない。それ…なのに…。


「かりそめの自由ってモノってことだよな。
で、本物の自由ってなんだ?」

「…私の心。」

「心?」

「そう。私の心の自由は奪われたの。お父様の言いなり。」


口にすると酷くみじめに聞こえる。でも事実だ。私は実際にお父様の言いなりで、お父様は私のためを思ってやってると思っているけれど、私はそれを私のためだとは全く思えない。





「…泣きそうな顔、我慢すんなよ。」

「え…?」





またしても気安く触れた手。でもそれは、〝気安い〟と呼ぶにはあまりにも優しかった。
一度(ひとたび)瞼を閉じると、いつの頃からか我慢していたものがあっさりと流れ落ちた。



「そーそー。それが自然だ。」


頬に触れていた手がいつの間にか頭の上に乗っていて、軽くリズムを刻んでいる。それを痛いとは全く思わず、むしろ心地良いとさえ感じてしまうのは手の温さとリズムの良さのせいなのだろう。

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