お姫様の作り方
「路上での出会いは〝決められたもの〟じゃなくて、〝お前が選んだのか〟って訊いてんだよ。」


決められたもの、それはつまり運命というものだ。私が歩むべき道、選択すべきもの、そんなものはたくさんある。でも由貴はそういうことを訊いているんじゃない。
由貴の言葉にどう答えればいいのか分からずに視線が彷徨う。


「っ…路上での…出会い…。」


それはつまり…


「由貴との…出会い…。」


自分でそう口に出して頬を熱くするなんてバカみたいだ。でも、思い返してみればそれは私がはっきりと〝選んだ〟ものだ。
だったら、由貴に返すべき答えはたった一つ。


「…私が、選んだ。由貴の声が聴きたくて、由貴の音に出会いたくて。」


だから車を降りた。決められた道ではない道を歩きたくて。


真っすぐに見つめられるから見つめ返したけれど、段々恥ずかしくなって来て視線を先にずらしてしまった。…恥ずかしくて仕方がない。何が、ということではなくて。


「…なんで視線外すんだよ。」

「な…な、んと…なく…っ…。」

「ったく言ってること結構大胆なのに、そこで照れるから意味分かんねぇよなーお前。」

「っ…意味分かんなくないっ!」


そう反発するものの、顔は上手く上げられない。


「…茉莉花。」

「な、なに…。」


ゆっくりとなんとか顔を上げようとすると、由貴の指が少しだけ強引に私の頬から顎にかけての部分に触れた。


その後に触れたのは、手じゃない。

< 122 / 200 >

この作品をシェア

pagetop