お姫様の作り方
「っ…はぁっ…はぁっ…。」


そのまま走り続けて、見慣れた公園に辿り着く。私はゆっくりと足を止めた。掴んでいた手を自然と離してしまう程度に、指先には力が入っていない。


「…こ、ここで休み…ませんか?」

「お前…っ…意外と足、速いのな…?」


お互い息があがったまま、荒い呼吸を繰り返す。時間を経て少しずつ落ち着きを取り戻し、私は口を開いた。


「…口元、切れてます。血も出てる。そこに座ってください。」

「いーよ、そういうの。慣れてる。」

「だめです!慣れてるとかそういう問題じゃない!」

「こんなんほっとけば治る。」

「それじゃ私の気が済まないんです!」

「は?」


公園の外灯が光り出す。それと共に、彼の顔がはっきりと浮かび上がった。
少しつり上がったきつい目つき、そして何より大きな身体は高校生離れしている。
一瞬、怖いと思ってしまう。その大きさと、目つきに対して。


「顔、引きつってんぞ。」

「え…?」

「それも慣れてる。」

「っ…ご、ごめんなさい。」

「慣れてるっつってんだろ。さっさと帰れ。俺に関わってもロクなことねぇし。」


そう言って私に背を向けて去ろうとする彼。
私は咄嗟に、彼の腕を引いた。

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