お姫様の作り方
「っ…。」


彼が驚いたのが分かる。大きな身体が一瞬びくっと動いた。


「ごめんなさい。初めてちゃんと顔と体つきを見たら…びっくりしました。あまりにも大きかったし、目もちょっと鋭かったし。でも、それであなたを傷付けたのならごめんなさい。」

「傷付いてなんかねぇから、離せ。」

「嫌です。ここに座ってください。」

「だから、怪我は大丈夫だって。」

「大丈夫かどうかは私が見て、判断します。いいから座ってください!」


ちょっとだけ語気を強めてみた。学校ではあまり声を荒げることはないけれど、家ではこのくらいはっきり物を言うタイプなのだから、これがいつも通りとも言える。


私があまりにもはっきりと言ったせいか、彼は観念したかのようにベンチに座った。


「それでいいんです。今タオル濡らしてくるので待ってて下さい。逃げないでくださいよ?」

「…逃げねぇよ。つーか敬語やめろ。」

「え?でも…。」

「俺2年。お前は?」

「あ、私も2年生です。」

「じゃーいらねぇだろ。タメなんだから。」

「…そ、そう…ですね…ではなくてそうね。敬語、やめます。」

「そーしろ。」


ぶっきらぼうに言った彼は、逃げもせずベンチに座っている。
私はそれを確認してから持っていたタオルを水で濡らした。水は冷たく、手もいきなり冷えてしまった。

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