お姫様の作り方
「えっと…口元、そのまま動かさないで。」

「…しみねぇよな?」

「それは保障できないけど…。」

「じゃーやめろ。」

「しみるのが嫌なの?」

「痛いのが嫌なんだよ!」

「そんなに大きいのに?」

「大きさ関係ねぇ!」

「じっとしてれば痛くないから、じっとしてて。」

「…本当だろうな?」

「私は嘘が好きじゃない。」

「…それは俺もだ。」

「じゃあ、タオルあてるから動かないで。」


彼は目を閉じ、微動だにしないでいる。私はその切れた口元にタオルをあてた。その瞬間、彼はびくっと身体を強張らせ、後ろに少しのけぞった。


「ってぇ!お前、じっとしてれば痛くねぇって!」

「気の持ちようよ!痛くないってちゃんと思った?」

「それ、さっき言ってねぇだろ!いてぇ!」

「いいから手も出して。擦れてる。」

「もういい。痛い。」

「なに子どもみたいなこと言ってるの?いいから手、出して。」

「いいって。」


…微妙に頑固だ。そう思って私は彼の手を強引に掴んでタオルをあてた。


「っ…だからいてぇよ!少し加減しろよ!なんでそんなぐってあてるんだよ!」

「そんなに力は入れてないわよ!」

「…ってぇ…。」


彼は私がタオルをあてた手を見つめながらそう呟いた。

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