お姫様の作り方
「…何がまずいと思っているのかは分からないけれど、でも私にとってあなたが来ることはまずくないわ。
だから今ここで私にタオルを返してくれないのなら、教室まで来てほしい。下駄箱に綺麗なタオルを入れても無意味でしょう?」

「…っ…。」


ここは私の理屈が勝ったみたいだ。彼はポケットからタオルを取り出すそぶりを見せない。


「暗くなっちゃったわね。…それに寒いし。そろそろ帰りましょうか。」

「…送る。」

「え?」

「暗いし送るってんだよ。嫌ならそう言え。」

「えっと…嫌ではないけど、でも申し訳ない…。」

「俺がいいって言ってんだからいいんだよ。家どこだ?」

「向こうに真っすぐ。」

「分かった。」


私がカバンを持つのを待って、彼が先に歩き出す。
私は一体どこを歩けば良いのか分からなくて、彼の3歩後ろを歩く。


「…俺にびびってんのか?」

「え?ど、どうしてそうなるの?」

「後ろ歩くな。送る意味ねぇだろ。襲われたらどうすんだ。」

「じゃあどこを歩けば…。」

「嫌じゃねぇなら、隣歩け。こっち。」


彼が指をさした先は歩道の内側だった。彼は車道側に立ち、自分の隣を指差して、むすっとした表情を浮かべている。


「…無理に、とは言わない。」

「隣、歩きます。」


彼の隣に進み出て、その隣を歩く。
最初は彼の歩幅に合わせるのが難しく(なんといっても彼は私よりはるかに足が長い。歩幅が違いすぎるのだ)、少しかけ足気味になっていたが、いつの間にか普通のペースで歩けるようになっていた。

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