お姫様の作り方
家までの道のりを教えるだけの会話しかせずに、ただ足を動かす。
無言は嫌いじゃない。彼が隣にいることも全く嫌ではない。


15分ほど歩いて、家に辿り着く。


「…わざわざありがとう。」

「別にいい。」

「一つ、気になったことを言ってもいい?」

「…なに?」

「あなた、『どういたしまして』って言えないの?」

「なっ…なんだよいきなり…。」


さっきから私は何度か彼に対して『ありがとう』と言っている。純粋に彼への感謝の想いがあるからそう口にしているが、彼はそれに対して『別に』と言うばかりだ。私の『ありがとう』という感謝の想いはないがしろにされている。


「別にって言われると、その言葉の先には『どうでも良い』が続いているように思ってしまうのよ、私。」

「…どうでもいいなんて言ってねぇ。」

「じゃあ、『どういたしまして』って言って。」

「はぁ?なんでそうなるんだよ。」

「ありがとうに対してはどういたしましてが必要でしょう?」

「…変わってんな…やっぱお前。」

「え…?」


彼の表情が少しだけ和らぐのを感じる。変わっているとはよく言われるけれど、…でも、何故だろう。彼にそう言われてもあまり不快だとは思わない。


「俺を怖がったことをすぐに謝ったり、微妙に説教したり…あと、妙に世話焼いたり。…意味わかんねーよ、まじで。」


そう言って、彼は小さく笑った。本当に一瞬だけ、笑った。

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