お姫様の作り方
「私は私の良心に則って行動しているだけよ。」

「…そーかよ。まぁなんでもいいけどな。じゃあタオル、洗って返す。」

「分かった。じゃあ、私は待ってます。」

「……どう…いたしまして。」

「え…?」

「っ…お、お前が言えっつったから言ったんだよ。もう言わねーからな!」

「あっ…ちょっ…!」


引き留めようと声をかけても、彼に私の声は届いていないようだった。
去り際に一際小さく聞こえた『どういたしまして』がやけに耳に残って、頭の中で繰り返し再生される。


ぶっきらぼうに言葉を紡ぎ、どこか不器用な感じがして、それでいて見た目は少し怖い。
でも、ちゃんと真正面から向き合って話をしてみると、ほんの少ししか話をしていないけれど、それでも見えてくるものがある。


少し照れたり、痛がったりしていると子どもっぽく見えるところも、こうして出会って話をしなければ知ることはなかった。


私を「変わっている」と言ったときの表情はとても優しかった。
普段「変わり者」だと言われても「そうではない」「普通だ」と否定するのに、彼の言葉を否定したいとは思わなかった。


…それがどうしてなのかははっきりと今、分からないけれど。
だけどもし一つ、その理由を挙げるとするならばきっと、彼が一生懸命言葉を選んでくれたような気がするからなのかもしれない。




「大神…泰雅…。あ、クラス、聞き忘れたな、私。」




玄関を開ける前に一度彼の名を呼んだ。

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