お姫様の作り方
* * *
彼に出会ったのは水曜日。
彼は木、金と教室に現れなかった。土日を経て、今日は月曜日。
私はいつも通りの朝を迎え、いつも通りの時間に学校に到着した。
「…お、おい。」
いつもとは違うことが起きた。背後から声を掛けられる。
―――その声には聞き覚えがある。
振り返ると、かなり見上げなくては顔が見えない彼が立っていた。
「おはよう、泰雅くん。」
「お、おう。」
「『おう』ではなく、私はおはようと言ったのよ。挨拶はちゃんとしてくれないと。」
「…はよ。」
「まぁ…ひとまずはそれでいいことに…する。百歩譲って。」
「お前、母親より口うるさいな。」
「そんなことはどうでもよくて、遅い!私、木曜、金曜と待ってたのに。」
「…それは、悪い。」
声のトーンが一気に落ちて、彼が少ししゅんとしたのが分かる。
「…何回も教室の近くまで行った。でも、踏み出せなかった。」
「…どうして?」
「お前は俺と全然違う。立場も、環境も、何もかも。」
…何を、当たり前のことを言っているんだろうこの人は。
そんなことを思ってしまうと冷静ではいられない。私の中の何かがパンと破裂した。
私は彼の腕を掴んだ。
「っ…な、なんだよ。」
「そんなの当たり前。正当な理由になっていないわ。」
私はいつもの場所まで、彼の腕を掴んだまま向かった。
彼は途中で私の手を振りほどきはしなかった。
彼に出会ったのは水曜日。
彼は木、金と教室に現れなかった。土日を経て、今日は月曜日。
私はいつも通りの朝を迎え、いつも通りの時間に学校に到着した。
「…お、おい。」
いつもとは違うことが起きた。背後から声を掛けられる。
―――その声には聞き覚えがある。
振り返ると、かなり見上げなくては顔が見えない彼が立っていた。
「おはよう、泰雅くん。」
「お、おう。」
「『おう』ではなく、私はおはようと言ったのよ。挨拶はちゃんとしてくれないと。」
「…はよ。」
「まぁ…ひとまずはそれでいいことに…する。百歩譲って。」
「お前、母親より口うるさいな。」
「そんなことはどうでもよくて、遅い!私、木曜、金曜と待ってたのに。」
「…それは、悪い。」
声のトーンが一気に落ちて、彼が少ししゅんとしたのが分かる。
「…何回も教室の近くまで行った。でも、踏み出せなかった。」
「…どうして?」
「お前は俺と全然違う。立場も、環境も、何もかも。」
…何を、当たり前のことを言っているんだろうこの人は。
そんなことを思ってしまうと冷静ではいられない。私の中の何かがパンと破裂した。
私は彼の腕を掴んだ。
「っ…な、なんだよ。」
「そんなの当たり前。正当な理由になっていないわ。」
私はいつもの場所まで、彼の腕を掴んだまま向かった。
彼は途中で私の手を振りほどきはしなかった。