お姫様の作り方
「『あなたが周囲からどのように思われているか、呼ばれているかなんて私、全く興味ない。重要なのは私があなたをどう思って、あなたが私をどう思うか。』
私、前に一度、こう言ったはずだけど?」


私がそう言うと、彼は「ああ」と低い声を漏らした。


「お前は…お前だから興味ねぇとか言えるんだよ。俺だって興味なんかねぇよ。でも事実、俺の評価はある。それでお前が影響を受けるのが嫌だ。」

「…勿体ない。」

「え…?」

「私はその影響も何もかも気にしない。たとえあなたが気にしたとしても。
それに勿体ないと思う。あなたを周囲が言っているように評価することは。周囲の発言が何かは分からないけれど、でも私は自分で触れて、見えるようになったこと、ものからあなたというものを知っていきたいと思う。
…私の言葉は信じられない?」


彼は黙ってしまった。私も彼の頬から手を下ろす。
無言の時が落ちる。沈黙を破ったのは彼。


「…その質問は卑怯じゃねーか。」

「どうして?」

「…信じられない奴なんかに、タオル返してぇとも思わねぇよ。」

「それは確かにそうね。私は少し卑怯かもしれない。
…でも、私にこんな卑怯なところがあるってことを、多分あなた以外のこの学校の生徒は知らないのよ。」

「どういう意味だ?」

「言葉通りの意味。
さっきあなたは私を知って、それで傍にいてくれる人がいるって言ってたけどそうじゃないの。私の全てを把握してそれで傍にいたいと思って人が傍にいるわけじゃない。
…私だって陰では『変わり者』って言われているんだから。」

「…まぁ確かに、お前変わってるよ。」

「それはお互い様。」


私がそう言うと、ようやく彼はほんの少しだけ微笑んだ。

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