お姫様の作り方
「とにかく、あなたは私と話しているところを誰かに見られるのが嫌なのね?たとえ私が全く気にしないと言っても。」

「…俺が気になるからな。」

「分かったわ。じゃあここで会いましょう。朝はこの時間からなら絶対に図書室にいるわ。気が向いた日にでも来てくれれば…。」

「…なぁ、なんでお前、そんなに気にかけてくれるんだよ。」

「え?」

「タオル返したら終わりでいいはずだろ?なのになんで…。」

「…なんか…よくというか上手く言えないけれど…でも、あなた自身が思っているよりもずっと、あなたは悪い人ではないと思うから。」

「…は?」


あまり上手いとは言えない物言いに彼は明らかに困惑していた。


「それに、何となくだけど『変わり者』同士、上手くやっていけるような気がしたから。」

「…あっそ。」

「じゃあ残り20分、私は読書をするけどあなたはどうする?」

「…俺、読書苦手。」

「え、あ…そうなの。」

「あ、わ、悪い!お前を傷付けるつもりは…。」

「傷付いたわけじゃないの。ただ、残念だと思っただけ。私、本はとても面白いものだと思っているから。」

「…いや、聞くのはいいんだよ。ほら、なんつーか子どもの頃やってもらった読み聞かせ的な感じで話を聞くのは割と好きっつーか…。でも自分で字を追って読むとなると…。」

「じゃあ、私がボランティアで参加している読み聞かせ会に来る?」

「は?」


残り20分はいつも通りの読書の時間にはならなかった。
代わりに読み聞かせボランティアの話をし、土曜日に来てくれるという約束を交わしたところでその日は別れた。
もちろん、別れ際にタオルは返してもらった。

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