お姫様の作り方
【泰雅side】


…どうして今、俺の周りを子どもたちが取り囲んでいるのか。
そんなの、答えは簡単だ。あいつが、


『あのお兄さん、顔はちょっと怖いかもしれないけどとっても優しいお兄さんなのよ。背もとっても大きいから、肩車でもしてもらってね。』


なんてことを言うからだ。それで寄ってくる子どもも子どもだが、俺の周りにはすでに5人ほど並んだ列ができている。肩車待ちの列だ。
あいつの読み聞かせまでまだ時間があるようで、その待ち時間、子どもを飽きさせないようにするために俺は使われている。


「おにいちゃん!もっとすすんでー!」

「分かったから暴れんな。落ちるぞ。ちゃんと掴まれ。」

「はーいっ!」

「おにいちゃん!あたしもあたしもー!」

「つぎはぼくだよ!」

「待てって。ちゃんと順番守れ。俺もすぐ帰ったりしねぇから。」

「じゃあまつ!」

「ぼくもまつ!」

「よし。」


俺はもう一度列に並び直した子どもたちの頭を軽く撫でた。俺の片手の掌にすっぽりと収まってしまう程度には小さい頭だった。


その後3人ほど肩に乗せ、下ろした時にあいつが読み聞かせスペースに入ってきた。本を数冊持っている。あいつがイスに座ると、子どもたちはすっとあいつの傍に集まっていく。


「おにいちゃんはやくはやく!」

「いっしょにいこ!」

「お、おう。」


最後に肩車をした女の子にジーパンを引っ張られ、俺はその子に付き従っていき、子どもたちの後方に座った。するとその子は何の躊躇いもなく、あぐらをかいた俺の足の上に乗った。
それを見ていたあいつはにっこりと微笑むと、絵本に目を落とした。


俺の心拍数が1段階、上昇した。

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