お姫様の作り方
* * *


子どもたちを帰し終えて、読み聞かせに使用した本を返しに立った彼女が俺を見つめて小さく微笑む。
その笑みの理由が分からずにいると、彼女はゆっくりと口を開いた。


「絵本のコーナーに行くんだけど、一緒に来る?」

「…行く。」


そう答えたのは絵本に興味があるからだけじゃなかった。
…とりあえず、いられるのならば隣にいたかった。無条件に受け入れてくれた彼女の隣に。


「えっと桃太郎はこっちで…あ、美女と野獣は向こうの棚の「ひ」のところに戻してくれる?」

「ああ。」


美女と野獣の本を受け取り、棚に戻す。彼女の元に戻ると、彼女はもう1冊も戻し終えていた。


「ありがとう。」

「…どういたしまして。」

「あ、前よりスムーズになったわね。」

「…い、いちいちお前はそういうことを言わなくていい!」

「だってそう思ったんだもの。思ったことはすぐ口に出ちゃう性格なのよ。」

「あっそ。」

「…ところで、読み聞かせなら物語を面白いと思えた?」


彼女の好奇心旺盛な丸い瞳が俺を見つめている。


「あ、ああ。面白かった。聞きやすかったし。」

「良かった!…嬉しい。」


そう言ってまた微笑む彼女に、どうしても心臓が反応してしまう。
…違う、ありえないということは頭で分かっているのに。

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