お姫様の作り方
「あ、そういえば子どもたちにも好かれてたわね。えみちゃんなんて膝に座っちゃって。」

「あ、あれはお前が肩車お願いしろとか言うから…!」

「でも子どもたちは誰ひとりとしてあなたを怖がらなかったでしょう?」

「え…?」


…そう指摘されて思い起こせば、確かに子どもたちはたくさん寄って来た。怖がったりせず、むしろさっきの彼女と同じように好奇心をその瞳に宿して。


「…子どもって本能的に分かるのかもしれないなって最近思うの。」

「何をだよ。」

「そうね…その大人が良い人かどうか。」

「え…?」

「良いっていう意味には色んなものが入っているかなとも思ってる。
子どもたちには難しいことはよく分からない。だからこそシンプルに、それでいて感じたまま素直に感情を表している。
そんな素直な子どもたちがあなたに笑いかけて、あなたと一緒に絵本を聞きたいと思った。あなたとまた遊びたいって最後に言ってる子もいたわ。
…ねぇ、子どもたちの言葉なら私の言葉よりもずっと素直に受け取れるでしょう?」


…彼女の言いたいことが段々分かって来た。


「物事の本質を見抜けるかどうかは、大人だからできて子どもだからできないってものじゃないわ。むしろ、大人になればなるほどいらないフィルターは増えていく。その人の本質を見るために邪魔になるもの、たとえば不確かな情報とかね。」

「……。」


…どうしてここまでしてくれる。様々なものを諦めてきた俺に、どうして。
―――期待、してしまいたくなる。


「子どもたちは真っすぐにあなたを見て、あなたのことを好きになった。
だから私も真っすぐにあなたを見て、あなたのことを知っていきたいの。
今日また一つ、子どもと遊ぶときの無邪気な顔も見れた。これは私が知らなかった新しいあなた。
…それを私は素敵だなと思う。」


頬が熱い。…この日はこの後、彼女の顔を直視することができなかった。

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