お姫様の作り方
* * *
読み聞かせを終えてから、彼は朝の図書室に少しずつ頻繁に顔を出すようになった。
彼は頑張って薄めの小説を読んでいるらしいが、やっぱり字を読むのは苦手なようで(聞いたところによると国語の点数は赤点ギリギリのようだった)あまり進んでいない。
他愛もない話をして、本を読む。
いつも通りだったことに少しだけ変化が訪れて、私はその日々に楽しさを感じていた。
聞く人が聞けば、なんてくだらない話をしているのかと思うだろう。
でも少なくとも私にとってはくだらない話なんかではない。彼を知り、自分を知ってもらいたいと思う。彼が小さく笑って、微笑み返す。そんな穏やかな時間を大切だと思う気持ちはどうしたって否定できるものではなかった。
そんな風に大切だと思える時間が増えて3週間が経った。
12月の中旬になり、寒さが厳しくなった頃。
朝の図書室に彼と私以外の〝人〟が現れた。
「会田さん、噂通り朝はやっぱりここにいたんだね。」
「っ…。」
彼ではない男の人の登場に言葉を失う。
いつもと同じ場所なのに、全くそのようには感じられなくて、それが余計に焦りを助長する。
読み聞かせを終えてから、彼は朝の図書室に少しずつ頻繁に顔を出すようになった。
彼は頑張って薄めの小説を読んでいるらしいが、やっぱり字を読むのは苦手なようで(聞いたところによると国語の点数は赤点ギリギリのようだった)あまり進んでいない。
他愛もない話をして、本を読む。
いつも通りだったことに少しだけ変化が訪れて、私はその日々に楽しさを感じていた。
聞く人が聞けば、なんてくだらない話をしているのかと思うだろう。
でも少なくとも私にとってはくだらない話なんかではない。彼を知り、自分を知ってもらいたいと思う。彼が小さく笑って、微笑み返す。そんな穏やかな時間を大切だと思う気持ちはどうしたって否定できるものではなかった。
そんな風に大切だと思える時間が増えて3週間が経った。
12月の中旬になり、寒さが厳しくなった頃。
朝の図書室に彼と私以外の〝人〟が現れた。
「会田さん、噂通り朝はやっぱりここにいたんだね。」
「っ…。」
彼ではない男の人の登場に言葉を失う。
いつもと同じ場所なのに、全くそのようには感じられなくて、それが余計に焦りを助長する。