お姫様の作り方
「…一つ、お訊きします。」

「なに?」

「一体あなたは私の何なんですか?」

「え?」

「何様のつもりなのかと訊いているんです。」

「何様って…別に俺は…。」

「彼の何も知らないくせに、勝手なことを言わないでください!」



身体だけじゃなく、声まで震えた。視界が水分で滲んで相手の顔がよく見えない。…でも、顔なんて見たくないから丁度良い。



「それはあなたが直接見たりした結果ですか?どうせくだらない噂でしょう?
私は自分で見て、自分で話したことしか信じません。人の話は本質を見にくくするからです。
私が出会った彼はっ…た、確かにケンカっ早いところはありました。それは認めます。でも、それは理由なき暴力ではありませんでした!
理由があれば暴力が認められるなんてことを言うつもりはありません。だけど、その時私は確かに救われたんです。…彼の優しさに、ちゃんと私は救われたんです!」


一度流れ出した言葉を止める術を私は持たない。


「私が知っている大神泰雅くんはあなたが言っていたような人じゃありません。
子どもっぽくて、だからこそ子どもに好かれて、無邪気に笑って。
文字は不得意で、でも本を好きになろうとしてくれて、そして…。」


一番大切なことは、それじゃない。


「いつの間にか当たり前みたいに傍にいてくれて、それが心地良いと思える…私の大切な人です!」


悔しい。私が知ってる彼とは違う、彼じゃない〝彼〟が彼だと思われていることが。
悔しくて苦しくて、涙が出る。


「ちょっ…落ち着いてよ。そんな泣くこと…。」

「っ…!」


突然視界が真っ暗になった。
背後から誰かの腕で目を覆われている。


…誰か、じゃない。こんなことをするのは、たった一人だけ。

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