お姫様の作り方
「真鈴を泣かせるな。」


低い声。…初めて聞いた声に近いその声にどこか安堵している自分がいた。


「お…おがみ…っ…。」

「泰雅…くん…?や、やっぱり…。」

「やっぱりってなんだよ。」

「いやだって腕の力、強いし…。」

「あ、悪い。」


パッと腕が離れて視界が開ける。少し彼の制服に吸収されたのか、涙は拭われていた。


「大神お前、いつから…。」

「今日、こいつよりも早く来たんだよ。でお前が現れたから出るに出れなくて。
…俺のことは何言ってもいい。だけどな、こいつを泣かせるのは許さねぇ。」


低い声が静かな図書室に響く。目の前の失礼極まりない男子生徒が後ずさるのが分かる。


「っ…。」


男子生徒は図書室を出ていった。
残されたのは私と彼。これでいつも通りだ。先にイレギュラーが起きてはいるけれど。


「…大丈夫か?」


少し屈んで視線を合わせてくれる彼に、何故かまたじんわりと涙が滲んでくる。そう言えば一度泣くと上手く泣き止むことのできないタイプであることを忘れていた。…泣くなんて久しぶりだ。


「お、おいっ!なんで泣くんだよ!俺何もしてねぇぞ?」

「…わ、わかってるっ…別に…あなたにっ…何かされてっ…な、泣いてるわけじゃ…ないっ…。」


ごしごしと目元を拭いながらつっかえつっかえ何とか言葉を口にする。
目元を拭う私の腕を、彼の腕が止めた。

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