お姫様の作り方
「っ…離し…。」

「そんなにごしごしやると目、腫れるだろ。
…嫌なら泣いてるとことか見ねぇし、出て行けっつーなら出ていくから、焦って止めようとすんな。まず落ち着け。」

「…っ…。」


優しいことを言わないでほしい。そんなことを言われるとますます涙が止まらなくなる。


「…俺、いない方がいいか?」


私はその言葉を首を横に振ることで否定した。
今は、いてほしい。泣き顔を見られることは本当はあまり好ましいとは言えないけれど、でも今一人にはなりたくない。


「じゃあ泣き止むまで待つ。」

「…い、一度泣くとっ…な、なかなか、涙っ…止まらない…たちで…。」

「じゃあ1限無理かもだな。まぁ俺はいいけど。」

「わ、私も…別にいいっ…。」

「…珍しいな。でもじゃあ都合いい。」

「…?」


それはどういう意味だろうか。
彼の言葉の意図するところが分からなくて黙っていると、彼が口を開いた。


「泣き止んだら、ちゃんと話そう。話したいこと、あるし。」

「…分かった。」


ポンと大きな彼の手が頭に乗った。あまりの大きさに、自分が突然子どもになってしまったような気分になる。


それからたっぷり20分をかけて、私はようやく泣き止んだ。
その時には朝のHRが始まっていた。

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