お姫様の作り方
図書室の一番奥の棚の下に座る彼の隣に私も座った。
さすがに授業をサボっているのだから、堂々とイスを使うのは気が引けたからだ。


「…ほんとに泣き止むのに時間かかったな。」

「それはその…ごめんなさい。」

「いや別に…むしろ謝んねぇとなんねーのは俺の方だ。
…お前が怒って泣くことなかった。」

「そんなことない!あれは私、怒って当然だったと思う。まさか涙が出てくるとは思わなかったけど、でも…後悔はしてない。」

「うん。それは否定しねぇよ。だから…。」

「…?」


彼が一瞬言い淀む。しかし彼は真っすぐに私を見つめて口を開いた。


「…ありがとう。さっきのお前の言葉、すげー嬉しかった。」


彼の頬が赤く染まる。それに反応するように、突然私の頬も熱くなった。


「どう…いたしまして…。」

「怒れない俺に代わってお前が怒ってくれた。
…だから、あの時お前のところに行けた。」

「…どういう、意味…?」


そう問うと、彼は頬を赤く染めたまま、小さく笑って言葉を紡ぐ。


「…お前の言葉が勇気をくれたんだよ。踏み出すための勇気を。」


『だからありがとう』と彼は重ねて、小さく言った。

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