お姫様の作り方
「あなただって私にこういう質問をしたでしょう。それに私は現段階で応え得る限りで応えたわ。」

「…そりゃそうかもしんねぇけど。」

「あなたの想いを聞かせてほしい。」

「あんだけ言えば…伝わるだろ。」

「あんだけって…会えて良かったとしか…。」

「だから、それが全てだろ。あれが今の俺の限界だよ!」


『くそっ』と小さく呟いて、彼は体育座りしたその膝に顔を埋めてしまった。
…こうやって縮こまられると身長差が30センチ以上あるなんて思えなくなる。
―――つまり、彼をもっと身近に感じられる。なんだろう、何故か今、無性に…彼の頭に触れたい。
その衝動と誘惑に負け、私は彼の頭の上に自分の掌を乗せた。


「な…なんだよ。」

「そうやって縮こまると、距離が近くなるなって思っただけ。」

「で、なんで頭の上にお前の手、乗ってんだ。」

「だってこの距離じゃないとあなたの頭を撫でることなんて出来ないから。今がチャンスかなって。」

「っ…子ども扱いすんな!俺はガキじゃねぇんだよ!」

「子どもだなんて思っていないわ。こんなに大きな子どもがいても困るし。
でもなんだか今無性に頭、触りたいって思ったの。」

「…だからお前は…。ってもういい。お前には何言っても無駄だった。」

「あら、それは聞き捨てならないセリフね。無駄なんかじゃないわ。」

「じゃなくて。…お前、信じられないくらい鈍い奴だった。」

「…そう、かしら?」


彼の少し柔らかい髪は思っていたよりもずっと心地よくて、手を離すのを惜しいとさえ思ってしまう。
だけどこのまま撫で続けていたら、おそらく彼の機嫌は悪くなるだろう。


「…そろそろ離した方がいいわよ、ね?」

「…いーよ。気の済むまでそうしてろ。」


…予想していた答えとは真逆の答えが返ってきて、私は面食らった。
それでも心地良いことには変わらないので、遠慮なく撫で続けることにする。

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