お姫様の作り方
しばらくそうしていると、彼の頭がカクンと1度落ちた。


「え…?」

「あー…悪ぃ。なんだか気持ち良くて…寝た。一瞬。」


そう言って大きな欠伸を零す彼に思わず笑ってしまう。
頭を撫でると眠くなるなんて、ますます子どもみたいだ。


「…何笑ってんだよ。」

「だって、本当に子どもみたいなんだもの。寝てもいいわよ。」

「お前どうすんの?」

「…寝顔でも拝もうかしら。」

「母親か。」

「そうじゃないけど、でもそれも知らない顔の一つだから。」

「…じゃあ、顔隠して寝る。」

「そういうところが子どもみたいなのよ。」

「うるせーよ。」


そう言って彼はすっと瞳を閉じた。私は撫で続ける手を止めない。…止めたいとは少しだって思わない。


するとものの5分程度で彼の頭がまたしても落ちた。すーすーと規則正しい寝息まで聞こえてきた。
…完全に眠っている。それを確信して、下から彼の寝顔を覗き込んだ。


「っ…。」


そのあまりのあどけなさに、…突然心臓がドキっとした。
ドキドキとうるさい心臓をぐっと抑えて、もう一度覗き込む。


そこには本当にあどけなく、子どものような寝顔があった。
彼の中身を知っているからこそ、可愛らしく見えるのかもしれない。


「…可愛い。」


そう呟くと、なんだか私も眠くなってきた。
…これはひょっとすると、彼の寝顔の呪いかもしれない。
そんなことをぼんやりと思いながら、私も彼にならって瞳を閉じた。

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