お姫様の作り方
【泡になりたい】


「さてさて今度は2年の入江海央さんと…こちらが掴んだ情報によりますと大学生さんのようですね。えっとお名前は…空路陸さんのカップルです。
イメージは人魚姫でしょうか?パールっぽいイヤリングにネックレスがキュート!ブルーのドレスもとても綺麗です。それに陸さんがイケメン!高校生には出せない大人の余裕!」


相馬先輩に当たっていたスポットライトが私と陸くんに移る。
…これは思っていたよりも眩しいし、どうして私達が選ばれたのかもよく分からない。


「パールっぽいって失礼だよね。本物なんだけどなぁ。」

「陸くんのお母さんに今度改めてお礼言いにいくね。こんな文化祭なんかに大切なもの貸してくれて…。」

「すごくよく似合ってるよ。ほんとに可愛い。」

「っ…。」


陸くんと…付き合い始めて…結構な時間を一緒に過ごしてきたけれど、でもやっぱり私は慣れない。陸くんは何でもないことのように『可愛い』と言ってくれるけれど、私はその度にドキドキが止まらない。


「り、陸くんも…か、かっこいいよ。仮装にまで付き合ってくれるなんて思わなかった…。」

「あー…まぁ、普通に海央ちゃんのドレスが見たかったんだけど…それを由貴に言ったら俺もやらないとダメって言われて…で、なんか由貴結構ノリノリで、俺までって感じかな。」

「…嫌、だった?」

「まさか。まぁ自分の仮装は置いておいて、こんな可愛い海央ちゃん見れたんだから全部チャラでしょ。
…本当に、可愛い。できれば誰にも見せたくなかった、かも。」


そう言って一瞬だけ〝大人の人〟みたいに笑って、でもすぐにいつもの陸くんに戻った笑みを浮かべている。
…ほら、またドキドキが加速した。


「ほっぺ赤いよ。…そんな顔されちゃうと、ますます人に見せたくなくなっちゃう。」


ほっぺにツンと当たった陸くんの指が、またあたしのほっぺの熱を上げた。

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