お姫様の作り方
「…僕も大好きです、雪姫さん。」


ふわりと香るのがいつもだった洸の香りが一気にあたしを包み込んだ。それだけ距離がなくなったからだというのが事実だけれど、そんなことよりもなによりも…


「…あったかい…。」

「前から思っていましたが、雪姫さんはちょっと手が冷たいですよね。」

「洸の体温が高いだけだって…にしてもあったかい…ちょっと寒かった…。」

「あの、雪姫さん。なんかこう…ドキドキとかないんですか…?落ち着いちゃってませんか?」

「言葉にする方がドキドキするよ…。恥ずかしいし…。今もドキドキするけど、やっぱり洸はそれ以上に安心する…って方が感覚的に近い、かも。」

「…でもまぁ、そんなことを言っていられるのは今のうちですけどね。」

「へ?」


ゆっくりと腕が離れて、少しだけ距離ができる。
洸の右手があたしの左手を取った。そしてゆっくりとあたしの手を口元に持っていく。


「っ…な、なに…ひゃっ…!」


不思議な柔らかさが、左手の薬指に触れた。
ちゅっという甘い音をわざと立てた(と思われる)洸はいつもよりも悪戯っぽく笑って口を開いた。


「顔、赤くなってます。赤くしたのは僕ですけど。」

「なっ…だってびっくりするでしょー?」

「…じゃあ、もっとびっくりしてもらいましょうか。」

「え…?」


洸の細い指が顎にかかる。一瞬の真っすぐな眼差しがあたしの動きを止める。


洸の香りが強くなったその瞬間に、視界が洸だけになった。
その後、唇に柔らかい感触が舞い降りた。

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