お姫様の作り方
だから隣で寝るんだよ
* * *

「まーったく、また寝てるよ美森(ミモリ)は。」

「相馬!あんた起こす係でしょ?」

「いや、違うって。」

「美森はあんたが起こさないと起きないんだから。」

「…そんなことねーんだけど。」


ただ、すこぶる機嫌が悪いというだけだ、俺が起こさない場合は。


「美森、起きろ。次は移動だ。」

「……。」


すやすやと気持ちよさそうに眠る美森は…これはどうやらすぐに起きそうにはない。それを察した友人たちは皆、俺に若干憐みの視線を向けつつ、その上背まで向ける。


「んじゃ、先に行ってるからなー。」

「美森のことよろしく!」

「お前ら卑怯だぞ!」

「どっこがだよ。うちの学校のお姫様の寝顔独占だぞ?羨ましいったらないね!」

「心にもねーこと言うな!」

「あ、バレた?」


俺にひらひらと手を振って、教室を後にする友人たち。…くっそ、このままじゃ完全に遅刻する。俺はこれでも真面目なんだ。遅刻なんてしたくない。


「美森。」

「んー…。」


机の上で寝返りをうつなんてどんだけ眠いんだお前は。そんなことを思いつつ、その黄金色のややウェーブがかった長い髪を少し引っ張る。


「った…。」

「起きろよ〝眠り姫〟。お前が寝てばっかいるからそう呼ばれるんだぞ?」

「…別に呼ばれてもあたしはいーんだけどぉ…」

「まぁ、実際そうだからな。」

「あ、れ…なんでみんないないの?」


まだ眠そうな目を擦りながら、ぼんやりとした声で美森はそう言った。


「次が移動だからだよ。」

「じゃあなんで樹(イツキ)がここにいるの?」

「…お前を起こすためだよ。」

「じゃあ王子様だー…眠り姫を起こす、勇敢な王子様。」

「ば…バカじゃねーの!何寝ぼけたこと言ってんだよ!起きてんなら早く準備しろ!行くぞ!」

「はーい!」


俺、相馬樹(ソウマイツキ)、高校2年。この眠ってばかりの通称〝眠り姫〟、伊原美森(イバラミモリ)の幼馴染だ。

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