お姫様の作り方
「付き合ってないよ。」

「ほ、ほんとですか?」


ぱぁっと彼女の顔が明るくなる。そしてその頬の赤さはさらに増した。…これは本格的に期待する。
もう人気もほとんどない。それもそのはずだ。美森は大体放課後もひと眠りしてからじゃないと動こうとはしない。


「あのっ…私…ずっと…。」


このパターンは、来た。


「相馬先輩のこと…す、…好きです。」


来た。本当に。予想通りの展開が進んでいくからこそ焦る。
だからなのだろう、こんなにも顔が熱いのは。


「そ、そのっ…み、美森先輩とお付き合いしてないなら私…私と付き合ってくれませんか?」


瞳に僅かに涙を溜めて、頬を赤く染めてそういう彼女は…
―――可愛い。こういうのは無条件に可愛い。美森なら絶対こんな顔はしない。


「…相馬先輩?」

「…うん、いいよ。」


迷いはなかった。その子を好きかどうかは分からないけど、嫌いじゃないのだから付き合ってみれば良い。そのくらいの軽い気持ち。人はこれを軽薄だと呼ぶのかもしれないけれど、そんなことはこの際どうでもいい。付き合っていくうちに好きになるのも、人はきっと恋と呼ぶ。


「本当…ですか?」

「うん、本当。」

「あの…先輩、私のこと…好き…なんですか…?」

「今は君のことを何も知らないけど、でも知れば好きになるかもしれない。だから教えてよ、君のこと。お互いを知るために、付き合おう。」

「は…はいっ…。」


にこりと微笑んだ顔があどけなくて可愛い。
こうして俺に、(いつぶりだかは忘れたが)彼女ができた。

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