お姫様の作り方
* * *


昼休みの屋上へ来た。隣には彼女がいる。


「屋上、初めてです!」

「あ、ほんと?結構気持ちいいよ?まぁもう秋だから、あんまり長居できないけど。」

「今日はお天気良いですけど、冷え込みますよね、朝とか。」

「あー分かる。俺も朝起きれなくてさー。でもみも…。」

「…?」


そこでぐっと抑える。美森の話はいい。しなくていいことだ。俺よりももっと朝に弱いやつがいるなんてことは。


「先輩?」

「あーうん、なんでもない。俺、腹減ったわ!早く食べよ。」

「はいっ!」


…なんなんだ、本当に。やけに美森が頭の中をちらつく。
メシの味なんてしない。今、俺、何の話をしてる?…どうして彼女は笑うんだ?


笑顔で話す彼女を可愛いとは思いつつ、なんだかよく分からない、ふわふわとした気持ちが浮かんでは消えていく。
そんな中、ガチャリとドアが開く音がした。





「…い、つき…?」

「美森…。」





現れたのは美森だった。目の下のクマが若干痛々しい。珍しいから尚更だ。


「あー…ごめんなさい、邪魔しちゃって。」

「いっ…いえっ!」


それだけ言うと、美森はドアを閉めた。階段を下りていく足音がどんどん遠ざかっていって、でもそれを俺は止めるべきなのかどうか分からずにいた。いや、止めるべきではないからこそ止めなかった。追い掛けなかった。

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