お姫様の作り方
* * *


彼女と付き合い始めて1週間。美森のクマがなくなることはなかった。


「美森お前…大丈夫か?」

「大丈夫ではないけど…。」

「…何があった?」


そう訊いても美森は机に顔を伏せてしまう。


「…樹には関係ない。あたしに構ってるところ見られたら彼女が泣くよ。女の子ってそういう、面倒なところあるから。」

「面倒なのはお前で慣れたよ。それに彼女はそういうタイプじゃない。お前よりずっと手がかからない。」

「ふぅん…。」


付き合って1週間。美森と帰ることはなくなった。美森との時間が大幅に減った。だからこそ、普段の色々な〝面倒事〟からは解放されるはずだった。それなのに…。


美森と一緒にいなくてよい、もしくはいるべきではない理由と時間が増えれば増えるほど気になって仕方がない。取れないクマの理由も不機嫌そうな横顔の理由も、そして何より…


「なぁ。」

「なに?」

「最近俺のこと避けてない?」

「避けてるって言ったら樹、困るの?」

「え…?」


予想をしていなかった角度からの返しにたじろいだのはもちろん俺だった。


「困らないでしょ。だったら放っておいて。」

「な、なんでそうなるんだよ。」

「筋通った話だと思うけど。」

「通ってねぇよ。困る困らないとかそういうことじゃねーだろ。実際不機嫌そうな顔して、クマも酷くなる一方だし、それで避けられるとか意味分かんなすぎて気になるわ!」

「おいおいなにー?ケンカかケンカ。」

「いーぞーもっとやれー!」

「バカお前ら!んなんじゃねーよ!」

「…樹、勝手。」


はやし立てる男どもの声の中でも、美森の小さく、それでもはっきりと声にした言葉は俺の耳を直撃した。

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