お姫様の作り方
* * *


昼休みになっても美森は戻って来なかった。後ろ髪を引かれる思いで教室を後にする。昼休みは彼女と過ごすと約束した。…それは破れない。


「眠り姫戻ってきたらメール入れようかー?」

「いい。気遣わせて悪ぃな。」

「いーってことよ。」


最近は寒くなってきたから屋上は止め、学食の片隅で一緒に飯を食べている。
そんな彼女は今日も俺より早く学食の前に立っていた。


「ごめん、いつもいつも。」

「いいえ。そんなに待ってません。」


にっこりと優しい笑顔で迎えてくれる彼女。笑顔はやっぱり可愛いと思う。


「行こうか。」

「はい。」


俺のすぐ隣をやや遠慮がちに歩く彼女。頭の位置がやっぱり美森よりもずっと低い。


俺が学食でAランチを注文し、彼女は俺の前で自分の弁当を広げた。毎日自分で作っているらしい。…美森とは大違いで家庭的な子らしい。


「…樹先輩?」

「あ、ごめんごめん。何の話だっけ?」

「…いえ、あの…大した話じゃ…。」

「そっか。」

「今日、いつもよりもずっと上の空ですね。」

「あ、そ、そうかな?」

「何か…ありました?」


おずおずとそう訊ねてくる彼女。本当にすごく心配してくれていることが伝わってくる。表情からも声色からも。美森とは違ってよく気がつくし、優しい。

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