お姫様の作り方
「いや…なんつーか…まぁ揉めたんだよね、端的に言えば。」

「美森先輩とですか?」

「え…?」

「…だから、樹先輩はそんな顔してるんですね。」


そう言うと、彼女は少し悲しそうな表情を浮かべていた。だが、その後ぱっと切り替えたのか、穏やかに微笑みながら口を開く。


「何があったか教えてください。」

「いやでも…ほんとにくだらないというか、つーか美森が勝手っていうか…。」

「でも、樹先輩にとってはすごく引っ掛かることで、気になるんですよね。」

「それは…まぁ。」

「私なんか絶対に何かできるとは思ってませんけど…でも私も美森先輩と同じ女の子ですし、樹先輩よりは女心も分かると思いますよ?
…力になりたいです。だから教えてください。」

「……。」


初めて見る、彼女の強い眼差しに負けた俺は、あったことをあったように話すように努めた。
特に自分の感情を入れないようにしながら。


それでも彼女の表情が次第に落ちていくのを感じていた。





全てを話し終ってすぐにチャイムが鳴った。彼女は別れ際に笑顔を浮かべてこう言った。


「…樹先輩、お話があります。
放課後、屋上に来ていただけませんか?」

「…うん。分かった。」


何を言われるのか、なんとなく想像できる気がした。
俺はそんなに鈍い方じゃない。

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