お姫様の作り方
「…樹がいないと眠れない。苦しくて辛くて。
あたしだって樹が近くに…傍にいてくれるのが当たり前だったから、…寂しかった。」

「…じゃあちゃんとそう言えよ。」

「あ、あたしだって彼女がいる人に甘えちゃいけないことくらい分かってる!」

「いやまぁそうだけど…。変なところで空気読むんだな、お前。普段全然読まないくせに。」

「…だってあたし、樹の彼女じゃないもん。」

「彼女になってくれんの?」

「…彼女、にして…くれるの?」


美森がじっと俺を見つめる。…くそ、こういう時のこいつは小悪魔なんだ、分かってるんだ。でも、無条件に可愛いのも確か。


「眠り姫の王子には俺じゃ役不足感否めねぇけど、でも、眠り姫が選んでくれるなら。」

「…選ぶ。樹がいい。樹じゃなきゃ…だめなの。」

「…そっか。」


口にして見れば本当にくだらない。一番傍にいながらも、ある一線を越えずに付き合ってそれが苦しくなって。
お互いが同じ想いでいたのに、気付こうとしなかったのは…俺たちだった。


「…バカみてーだな、俺ら。」

「え…?」

「同じ気持ちだったのにすれ違うとか。…ちゃんと大事にしてたのに。」

「…うん。樹はいつだってあたしを大事にしてくれてた。」

「だったらこれからはお前も俺を大事にしてくれよー。」

「どうすればいい?」

「いきなり避けたりしないこと。」

「はぁい。」

「何かあったらちゃんと話すこと。」

「…ごめんなさい。」

「よし。じゃ…もう遅いし、帰るか。」

「うん。」


帰り支度をし、自然と繋がる手。
もうただの幼馴染ではない。手のかかる眠り姫を手に入れた。

< 61 / 200 >

この作品をシェア

pagetop