お姫様の作り方
* * *


「樹の手…暖かくて安心する…。」

「なぁお前、さっきからフラフラしてんだけど。」

「だって眠いんだもん。」

「はぁー…やっぱりな。」


恋人らしい甘い時間かと思いきやそれは全く違くて。
…というのも、美森がフラフラ歩くせいで俺はさっきから気が気じゃない。


「もうちょっとだから頑張れ。」

「…眠いー…。」

「寝不足っつってたもんな。」

「樹のせいだもん。」

「分かってるよ。」

「樹ー…。」

「なに?」

「眠たい。」

「うん、知ってる。ほら、そこ段差あるからな。」


俺の指摘に従って、足元の段差はクリアする。


「あたしが寝るまで、傍にいて?」

「は?」


それは…どういう意味だよ、美森。


「それは何?つまり家に来いってこと?」

「うん。」

「あのな、付き合い始めていきなりそれはねぇよ。」

「別に一緒に寝たいなんて言ってない。」

「お前な!あけすけにんなこと言うな!一応眠り姫なんだぞ!」

「そんなの知らないもーん。」


きゅっと右手が少しだけ強く握られて、俺は足を止めた。美森が先に足を止めたからだ。

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