お姫様の作り方
「なに?」

「眠たいの。」

「だから分かってるよ、それは。」

「…傍にいてほしいの。」

「あーもう!分かった!分かりました。行くぞ、家。」

「うんっ!」


美森の小さな手を握り返す。多分俺の苦手なものというか逆らえないものナンバーワンに君臨するのは甘えた美森の声だ。
あんな風に『傍にいてほしい』なんて言われたら『嫌だ』とは言えない。


「なぁ。」

「なぁに?」

「寝たいってことは手を出すなってことだよな。」

「…ん?」


あ、こいつ全然分かってねぇ。


「だから、眠りの妨げになることはするなって言ってるんだよな、お前。」

「…樹がいてくれるなら、あとはもうなんでもいいよ。」

「はい?」

「樹が一緒に寝てくれるなら寝てもいいし、樹が傍にいてくれるなら本当になんでも…。」


ふわぁとまた一つ大きな欠伸をして美森はそう言った。
…こいつ、ただ寝るってことが高校生男子にとってどんなに辛いものなのか、全然分かってない。


「あのなぁ、俺も聖人君子じゃねぇんだよ。だからお前の寝顔だけ見て満足できるとも思えねぇんだけど。」

「樹がしたいこと、していいよ?」

「はいぃ?」


その内容分かってんのかと問い正したくなるがここは道の真ん中。それはやめておく。


「…とりあえず家行くぞ。話はそれからだ。」

「はーい。」

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