お姫様の作り方
* * *


「…食べ終わった。」

「美味しかったですか?」


そう言って振り返った神谷はやっぱり笑顔だ。


「当たり前。食べ物はいつだって美味しくいただくのがあたしのマナー。」

「でしょうね。それは見ていて分かりました。」


にっこりと微笑んだその表情を崩さない神谷。


「職員室、案内する。」

「はい。ありがとうございます。」


すっとあたしの後ろに立つ。それも何の不自然さも醸し出さずに。あたしはじっと、その顔を見つめた。視線はそれなりに上げなくてはならない。


「こっち。」

「はい。」


靴が地面を踏む音しか聞こえない。


「雪姫さん。」

「…なに?」


不意に後ろから声がかかった。でも後ろを振り返りはしない。


「先程、『もう来ないで』と仰いましたよね?」

「それが、なに?」

「あなたがあの場にいたことを誰かに言いふらすなんてことはもちろんしません。…ですが、やっぱりもう来ないことを約束はできないなって思いまして。」

「は…?」


この言葉にはさすがに振り返った。

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