お姫様の作り方
「今海央ちゃんにこれを言うのは…なんていうか、弱みに付け込むみたいで嫌だっていうのと、あと…軽薄な男だと思われそうで嫌だなっていうのがあるんだけど…でも、海央ちゃんが全然分かってないから言うわ。」

「…分かってない、…かな、私。」

「んー…多分そんな気がするからちゃんと聞いて。うやむやにしたくない。」

「…うん。」


私は小さく覚悟を決めて顔を上げる。
陸くんの表情は…笑っていない。でも、怖くはない。


「会いたいって思ってるのは…俺も同じなんだよ。
それは振られて彼女がいなくなったから海央ちゃんをすぐ彼女にしたいとかそういうんじゃなくて、…そういうのじゃないんだ、本当に。」

「…分かってるよ、陸くんがそういう人じゃないことくらい。」

「いや、…まぁうん、海央ちゃんがそんな風に俺を思ってないことは分かってるけど、でもそれだけじゃなくて。」

「…うん。」


陸くんの言葉が何となく迷っているのを感じる。
でも、…陸くんが何を言おうとしているのか理解したいから待つことしかできない。


「…助けられたのは、俺の方だよ。
海央ちゃんがあの日傍にいてくれて嬉しかった。…正直、甘えた。君の優しさに。年上なのに変な話だよね。でも、甘えた。甘えたことが…心地良かった。
…振り返ってみれば、彼女の前では結構無理してたんだなぁとか思った。
なんて言うのかな、海央ちゃんの前ではそのままでいられるっていうか、お兄さんぶりたいとこはあるんだけど、でも一番恥ずかしいというか情けないところ見られちゃってるから、あとはどうにでもなれーみたいな感覚がどこかにあって。だから楽なのかも。」

「…それは、私も同じ。」

「え?」


甘えたのも、そのままでいられることも、…同じだ、私と。

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