Helloween Night【短】
「楽しそうだったなぁ」


呟いた声が、静かなリビングに響く。


背中を預けているソファーには、連日のバイトでクタクタになって眠っている健一。


彼の家に夕食を持って来た時、ちょうど友達とハロウィンパーティーに行く健二が出掛ける所だった。


仮装なんてガラじゃないけど、たまには健一とそんな雰囲気を楽しんでみたい。


「何よ、気持ち良さそうに寝ちゃって……」


彼の寝顔に唇を尖らせた直後、視界に入って来たマジック。


笑いを堪えながら健一の両頬に三本ずつ髭を描き、効果音にヒヤヒヤしながらも写メを撮った。


「Trick or treat、なんてね♪」


あたしは保存した写メを見ながら、こんな過ごし方も悪くないなんて思っていた。





この後、千晶が帰宅してから目を覚ました健一が鏡を見て絶句し、罪の無い健二が叱られるのだった――。





             END.


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