やっぱ幼馴染?
【第九話】 止めて  -樹-



俺は、雅に止めて欲しかった。
だからわざと『俺、柏木と付き合うかも』…そう言った。
雅なら…雅なら俺を止めてくれると思った。


「ふーん…ええんとちゃうんか?」
 

一番、望んでいない言葉が返ってきた。
少しでも…少しでも動揺してくれでもしたら柏木と付き合うのはやめるつもりだった。
そもそも付き合うつもりはないけど…でもそんな事いわれたら、

「俺かて高校生やし…ええよな。」

思ってもいない言葉が口から飛び出す。
ギクシャクとしてしまうがとりあえず相槌を返した。
ええんとちゃうか、そう言ったあいつは声音も表情も変えなかった。
意識してるのって…やっぱ俺だけやったんやな。

俺にそう思わせるには十分なた態度だった。
雅は俺に視線を向けずただただ俯いて足を前へ前へと動かすばかりだった。

「なぁ、お前はさ…。」

『俺の事どう思っとんの?』…そうきこうとした。
けど…聞けるわけがなかった。

「何でも…ない…。」

本当は何でもある。
それを雅に悟って欲しかった。

「お前の決めた事や。私は一切、口出しせぇへんで。」

雅は俺を見つめて言う。
やっと目が合った…そう思った。


「樹は樹、私は私や。」


…雅はそういうと走って俺から遠ざかって行った。
俺はどうすればいいか分からず、遠く見えなくなるまで雅の後ろ姿を見ていた。


「俺…どないすればええねん…。」



自分のすべきこと、本当に分からなかった。

選択肢はいくつもあって正解は一つ…選択肢は十も二十もある。
正解を見つける方が難しくて、考えれば考えるほど戸惑ってしまう。


俺は今、底なし沼の中にいるような気がした。



ゴールも、お前の本当の気持ちも分からない。
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