やっぱ幼馴染?
【第四話】 的中  -雅-


「おい、彰。」

私は一人の野球部員を呼び止める。
君島彰(きみしまあきら)。野球部員の一人。
背はまあ高く優しい顔つきをしている何か…『好青年』ってやつの見本みたいな奴だ。

「ん、何?」

彰はヒョコヒョコと私の元へ歩いてくる。

「…樹…見なかったか?」

すると彰は何かを思いだそうとしながら言う。

「何だっけな。10分くらい前か…何か女の子に呼び止められて中庭に行ったぞ。」

声音を変えずにそう言う彰。
うっわ…ホンマかいな…予感的中やんか。

「そうか。分かった、ありがとう。」

おう、彰はそう言うと私の元から離れて行った。
何やねん…あいつ…もう練習始まるんやで?にもかかわらず女か!!

と、まず最初は思ったが…

「な、何話してるんやろ…。」

心が何かに締め付けられる。
もう野球部の練習は始まっていてみんな走ったりしている。


やっぱ…気になる!!



私は野球部員にバレないように中庭へ駆けていく。

*

中庭にて。私は中庭の入り口の木陰に隠れる。
そして見覚えのある…というかいつも見ている背中を見つける。
樹や…私は目を凝らして樹の前に立っている女を見る。

「あいつ…もしかして柏木?!」

私は小さな声で叫ぶ。
あの栗色の長い髪といば…柏木優奈(かしわぎゆな)…そいつしかおらん。
私とクラスが同じ奴や。
あいつ柏木財閥社長の娘…って事は社長令嬢なのだ。
見た目もいかにも『お嬢様』って感じ。

「何で…何で柏木やねん?」

私は木陰から息を殺してみていた。

でも何か心から溢れるような何かがあった。
涙?…たぶん違う。怒りとか憎しみとかでもない。


たぶん、後悔だと思う。


樹が誰を選ぼうと私はそれに従うまでだ。


『樹がいいならそれでいい、樹が幸せなら私も幸せ』


そう思えるような人間になりたい。

僻んでばかりじゃなダメだね。人の幸せを喜ばないと…



私は無理矢理に自分にそう言い聞かせた。





そして私はグラウンドへ駆け足で戻る。
< 5 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop