やっぱ幼馴染?
【第五話】 柏木さん  -樹-


うっわ…やっば…練習始まるやん。いや、もう始まってるか?
長澤さんに絶対怒られるわ…俺はそう思う。
あ、長澤さんっていうのは野球部のキャプテンの事だ。
フルネームは長澤和己(ながさわかずみ)っていうて頼りになるいい先輩。

「ねぇ、浅山くん?聞いてる?」

うおっ!!…そうやった…俺、告白されてるんやったわ。

「あっあぁ…聞いてるで?」

俺はちょっと動揺しながらそう呟く。
柏木は俺の顔を覗きこみながら問いかける。

「私ね、浅山くんがずっと好きだったの。ねぇ、浅山くんは?」

いや…『ねぇ、浅山くんは?』て聞かれても…俺、お前とほぼ初対面やしな。
そーいやー…こいつ、雅と同じクラスやなかったっけ?…そんな記憶がある。
そんな事考えてる場合やないわ。俺はキョドってしまう。
どういう反応を取って良いか本当に分からない。

「ま、いいや。答えはいつでもいいよ。待ってるから。」

柏木は瞳を伏せながら何故か誇らしげに言う。
そして続けた。

「…私、勝てればいいのよ。あの子に。」

栗色の長髪を風に揺らしながら。
あの子?…いや、誰やねん。

「まあ、いいや。じゃぁね。」

柏木は俺にひらひらと手を振って中庭から消えた。



あの子?誰だよあの子って。

何かすごい気になるんやけど…


その時、俺はハッと我に返る。

「マズイ!!練習がぁぁぁああああ!!」



俺はそう叫びながら中庭を後にした。
< 6 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop