やっぱ幼馴染?
【第六話】 反則   -雅-


お前…これ…ちょっと絶対に反則やろ。


…告白?

あれ絶対に告白やよね?

いや…待てよ、もしかしたら柏木は樹に…


『勉強教えて!!きゃぴっ☆』…みたいな…??!!

とか現実を認めたくないあまりに意味の分からない事を考えてしまう。

それほどショックがでかいって事だ…。
そうだよな、わざわざ違うクラスの奴に『勉強教えて!!きゃぴっ☆』何て来ないよな。
そもそも勇人は人に勉強教えられるほど頭良くないし…。

「ヤバいヤバい…無理や…樹いなくなったら私、生きていけへん。」

下を向きながら私はそう呟く。
確かに私は樹の彼女じゃないからずっと傍にいて欲しいなんて言えない。
たぶん樹だっていつまでも私の傍にはいてくれない。

それは分かってるけど…分かってるけどさ。
…想いを伝えられないって辛いな…本当に。


すると誰かが後ろから私の背中を叩く。

「ぎゃっ。」

私は短く変な悲鳴を上げる。
私は恐る恐る後ろを振り返る。

「大丈夫か、お前。」

貴浩さんだった。
あ、貴浩さんていうのは部活の先輩。
落合貴浩(おちあいたかひろ)さん。

「えっ?ああ、ぜんぜん大丈夫ですよ。」

どうやら今は休憩時間らしい。
自分の事ばっか考えとって周りを見てなかった。マネージャー失格や。

「大丈夫そうには見えないけどな。」

貴浩さんは私にそう言う。何か見透かされてる感じ…。

「…樹だろ?…あいつもアホだからな。」

スポーツドリンクをガブガブ飲みながら横目で私に言う。
私はただ下を俯いて黙っていた。

「辛かったら笑う必要なんてないし、無理はすんなよ。」

そう言って私の頭を優しく撫でる。
そして貴浩さんはグラウンドの方へ小走りで駆けて行った。

「辛かったら笑う必要はない、か…。」

私は貴浩さんの言った言葉を一人、静かに呟く。
それは分かってるけど…何となくそんな事は出来なきなかった。

なんていうか、逆に…って感じ。


辛いときは笑わない、それはストレートだしそのまんまの意味だ。
でもそんな簡単なことが私は出来ない。

勇人に迷惑をかけたくない、とか樹に気持ちを悟られたくないとか。
色々理由はあるけど自分を守りたいんだと思う。


私が笑えば周りも笑ってくれるはず。

そうやって私は自分で壁をつくって、樹に近づき過ぎないようにした。



ねぇ、あんたはそれに気付いてる?
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