やっぱ幼馴染?
【第八話】 真っ白  -雅-


私と樹は黙って歩き出す。
会話が交わされる事はない。
ただお互い黙って足を前に出すだけ。

「なぁ…。」

後に樹が口を開いた。

「何?」

私は短く答える。
樹はどこか気まずそうに私を横目で見ながら再び口を開く。

「お前…知っとるんやろ?」
「何が。」
「柏木のこと。」

柏木のこと、それはあれだろうな。
俺が柏木に告られたこと知ってるんだろ?…これだろ。
え、いや…まてまて。

「何で私が柏木に樹が私で柏木は樹…あれ?」
「柏木は樹?…俺、柏木ちゃうやん。」

おっと…テンパりすぎや…落ち着け。
大丈夫や、冷静に考えて話せばいい。

「は、柏木の事?…何の事ですか?」
「…お前…バレバレやぞ。聞いたんやろ落合さんから。」
「樹は誰に聞いたん?」
「落合さん。」

落合さんか…許せんな。
余計な事を言いやがって…いつかグローブ隠したる。

「知っとるんやろ?」

樹は私に視線は向けずに言う。
私は諦めて正直にこくりと頷く。


すると樹は予想もしない事を言った。

「俺、柏木と付き合おうかなと思っとるんやけど。」


真っ白。

私の視界が真っ白に眩んだ。



「は?」


私は樹の言葉が信じられず間の抜けた声を出す。
樹が柏木と付き合う?…そう聞こえた。
きっと何かの間違いだ…。

「せやから柏木と付き合おうかなって。」

足元に転がる小石を蹴り飛ばしなが言う。
間違いではなかった。

私が一番最初に聞いた言葉は間違ってはいなかった。
樹は私の顔を見ているように思ったが私の顔からは視線が僅かに外されていた。




心なしか樹私からの意見を待っているように見えた。
< 9 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop