紅蓮の星屑
「私も初めてこれを見た時には脚が震えたよ。長年の勘か分からないが危険だとも感じた……。」
その通りだと道明は思った。肌から伝わるピリピリとした感覚のせいかも知れない。
こんな物が目の前に存在するのだ、下手したら核兵器なんか目じゃないのではないか。
と、大袈裟ではなく、そう思わせる何かがそこにはあった。
そう、決して触れてはいけないと思わせる……何かが。
ゴクリと息を呑み込み、思考を巡らす。
本当に触れた瞬間に命を奪われても不思議ではない、そんな感覚に襲われる。
だが、そんな事を考えると直ぐに笑いが込み上げて来た。
「フッ……。」
(今更死ぬのが恐くなったのか? 生きていても目標も目的もないんだ……。首吊りで苦しむよりよっぽどましだ!! やってやるッ!!!)
腹を決めた道明は力強く全身に力を込める。
その様子を見ていた今泉が、悲しげに視線を向けた。
しかし既に膨脛<フクラハギ>に力を入れて、彼は前進を始めていたのだ。
白と黒の大剣に近付き、その前に立つ。
先程とは比べようもない力の波動を彼は感じていた。
髪の毛が逆立つ、魂の奥底まで響く振動。
決意した彼の両手は、二つの大剣に近づいて行く。
「くそッ!! どうせ触れたら死ぬんだろッ!? だったら、二本同時に掴んでやるッ!!!」
叫びながら、道明が触れた瞬間であった。
二本の大剣から急激に光が溢れ出す。
その光は道明を呑み込むように膨れ上がり――
樹海を包み込み――……
そして、光は消えた。